観劇日記

だいたいタカラヅカ。ときどきその他。

SKIP(2017 NAPPOS PRODUCE)

北村薫さん原作の『SKIP』の舞台、観てきました。

もともと原作が大好きで(スキップ、ターン、リセット3部作の中でも一番好き)、しかも霧矢さん主演!

 

  • 舞台セット

小説の中では舞台が家だったり、学校だったり、町中だったりと時間も場所も移動します。

それが劇場に入ってみたら真ん中に2階建ての木のセットと椅子が並べてあるだけ。写真に撮りたかったな…

作中では椅子や机を設置したりどかしたり、盆に乗ったり下りたり、盆を回したりで時間や場所の移動があらわされていて、舞台の面白いところってこういうことだよなって。

 

てっきり17歳と42歳それぞれを演じ分けると思っていて、17歳の出番ってほんと冒頭だけだよなあとか思ってけれど、ほぼ常に2人が舞台上にいて、行動とセリフを分担していく形だった。

そして片方が動いているときのもう1人のセリフの言い方、息の合い方がすばらしかった。一番よかったのは、42歳に「飛んできた」真理子が鏡で己の顔を見るシーンだと思います。

深川さんが動いているときの霧矢さんの何とも言えない表情がよかった。眉をひそめている霧矢さんの美しさよ。

あと「文化祭のテーマソング」なるものを歌い踊るシーンがあって、霧矢さんの足さばきが本当に綺麗だった。ミュージカルも観たいなあ

 

  • セリフ回しについて

深川さんはじめ、高校生役の俳優さんたちは割と声を張っている感じがして、中学校の演劇部とかこういう感じだったなあと思った。宝塚とかの舞台は必ずマイクをつけているけど、SKIPはつけていないようだったので、それ用の発声なのかもしれない。あるいは子どもと大人を対比させるための演出?

それが悪いとか嫌いとかいうわけではないんだけど、深川さんのセリフを霧矢さんが引き取るとき、やっぱり霧矢さんの方が自然で余裕があるように聞こえた。

 

それから、北川薫さんのキャラクターに「~なのだ」と言わせる文章。キャラの心の声のその文体が私は結構好きなのだけど、霧矢さんにはなじんでいて、深川さんはそれほどじゃなかった気がした。多分私が原作を読んでイメージしていた真理子像が霧矢さんに近かったんだと思う。

  • 「飛んできてしまう」ということ

原作を読んでから時間が経って、真理子はわりと前向きに「飛んできた」ことを受け入れているような印象が残っていたけれど、舞台では葛藤が強く描かれていてはっとした。

たしかに、町中でカップルアベックが手をつないで歩いていることに困惑する真理子(17歳)が、もう夫と子供がいる42歳なんてことになったら、それは一気に価値観が揺るがされるに違いない。(それでも25年前に戻ろうとするような行動をとらないところが、真理子の真理子らしいところなのかもしれない)

 

それでも、42歳・国語教師・桜木真理子としての現在を一つ一つ知って、受け入れて、教え子からの好意も受け止めて、夫を夫として受け入れたからこそ、最後のセリフが光るんだろうなあ

「昨日という日があったらしい。明日という日があるらしい。だが、わたしには今がある。」

すごい言葉だなあ。。。

 

 

挟まっていたビラで辻村深月の「スロウハイツの神様」が舞台化することを知り、少し迷って、チケットを取ってしまいました。

これも高校のころ読んだ小説で、なんだか辛くなってしまうようなお話だった気がするけれど、舞台化するとなるとどうしても見たくなってしまった。

文庫を買って今読み直していますが、やっぱり辛くなるような、それだけインパクトのある話のような気がします。